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犬猫 麻酔モニタリング基準値 早見表
全身麻酔中の犬・猫について、目標とする範囲と、介入を検討する閾値を1枚にまとめました。 覚醒時の正常値ではありません。麻酔下では循環・呼吸抑制と体温低下により、覚醒時とは異なる範囲で推移します。
血圧・SpO2・ETCO2の閾値は ACVAA(米国獣医麻酔鎮痛専門医協会)2025年モニタリングガイドラインの記載に基づいています。
バイタルサインの目標値(麻酔中)
| 項目 | 犬 | 猫 | 単位 | 介入を検討する目安 |
|---|---|---|---|---|
| 心拍数 HRα2作動薬の前投与では徐脈側、浅麻酔・鎮痛不足では頻脈側に振れる。数値単独ではなく、血圧とあわせて傾向で読む。 | 60 〜 140 | 100 〜 180 | bpm | 持続する徐脈・頻脈 |
| 呼吸数 RR自発呼吸時の目安。IPPV中は設定回数で管理し、妥当かどうかはETCO2で確認する。 | 8 〜 20 | 8 〜 20 | 回/分 | 無呼吸・浅速呼吸 |
| SpO2ACVAA 2025は「95%未満の値はすべて原因を確認する」としている。酸素投与下では低下が遅れて表れるため、下がってからでは遅い。 | 95 以上 | 95 以上 | % | 95%未満は原因検索/90%未満は低酸素血症 |
| ETCO2猫は一回換気量が小さく、サンプリングによる死腔の影響も受けやすいため、犬より低めに表示されることが多い。健常例では軽度の上昇は許容される。急激な低下は回路外れ・心拍出量低下のサインでもある。 | 35 〜 45 | 30 〜 40 | mmHg | 60 mmHg超は対応 |
| 収縮期血圧 SBPカフ幅は四肢周囲の約40%。測定部位を途中で変えると値が動くため、同じ部位で継続する。 | 90 〜 140 | 90 〜 140 | mmHg | ドプラ法で90 mmHg以下 |
| 平均血圧 MAP組織灌流の指標として最も重視される。ACVAA 2025は MAP 60〜65未満で、麻酔深度・徐脈・循環血液量の評価と、必要に応じた強心薬/昇圧薬の使用を求めている。拡張期血圧は単独で判断しない。 | 60 〜 100 | 60 〜 100 | mmHg | 60〜65 mmHg未満 |
| 体温麻酔中はほぼ全例で低下し、導入後30〜60分で最も下がる。覚醒時の正常値(犬 37.5〜39.2/猫 38.0〜39.2)をそのまま当てない。下がってから温めるのでは間に合わないため、導入前からの加温が最も効く。 | 36.5 〜 38.0 | 36.5 〜 38.0 | ℃ | 36.0℃未満 |
人工呼吸(IPPV)設定の目安
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 一回換気量 Vt体重換算が基本。過大な換気量は肺傷害の原因になるため、ETCO2を見ながら最小限に調整する。 | 10 〜 15 mL/kg |
| 換気回数(IPPV)ETCO2が35〜45 mmHgに収まる回数に合わせる。回数を上げるより一回換気量を見直す方が有効なことが多い。 | 8 〜 12 回/分 |
| 最高気道内圧 PIP健常肺での目安。胸腔内操作・腹腔鏡・肥満例では上昇する。 | 10 〜 20 cmH2O |
| PEEP無気肺対策として用いる。かけすぎは静脈還流量を落とし、血圧低下の原因になる。 | 0 〜 5 cmH2O |
記録間隔の目安
ACVAA 2025ガイドラインは、麻酔記録に残す頻度についても具体的に示しています。
| 心拍数・血圧・SpO2・ETCO2 | 5分ごと |
| 体温 | 15分ごと(覚醒期は30分ごと) |
| その他の項目 | 15分ごと以上 |
平均血圧(MAP)計算
平均血圧(MAP)を計算する
観血的動脈圧が取れない場合、オシロメトリック法の収縮期・拡張期血圧から MAP =(SBP + 2 × DBP)÷ 3 で概算できます。
出典
- Bailey K, et al. The American College of Veterinary Anesthesia and Analgesia Small Animal Anesthesia and Sedation Monitoring Guidelines 2025. Veterinary Anaesthesia and Analgesia.(血圧・SpO2・ETCO2の介入閾値、記録間隔)
- Grubb T, et al. 2020 AAHA Anesthesia and Monitoring Guidelines for Dogs and Cats. American Animal Hospital Association.(モニタリング項目と管理の枠組み)
- 心拍数・呼吸数・体温・換気設定の範囲は、上記ガイドラインの考え方に沿って、麻酔管理で一般的に用いられている目安を示しています。
本表は麻酔管理の一般的な目安をまとめたもので、診断・治療の基準を示すものではありません。適正値は品種・年齢・基礎疾患・術式・使用薬剤によって変わります。個々の症例における評価と対応は、必ず獣医師の判断と最終確認のもとで行ってください。本表の利用により生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。
よくある質問
この早見表は無料で使えますか?▾
はい、無料・登録不要です。動物病院向けの麻酔記録システム「VetAnes」が提供しています。印刷して麻酔器やモニターの横に貼る使い方を想定しています。
覚醒時に習った正常値と数値が違うのはなぜですか?▾
この表は麻酔中の目標値だからです。全身麻酔下では麻酔薬の循環・呼吸抑制と体温低下により、覚醒時の正常値とは異なる範囲で推移します。たとえば体温は覚醒時なら犬37.5〜39.2℃ですが、麻酔中はほぼ全例で低下し、36.5〜38.0℃の維持と36.0℃未満での積極的な加温が現実的な目標になります。ETCO2も、猫では犬より低めの値で推移することが一般的です。
「介入を検討する目安」の根拠は何ですか?▾
血圧・SpO2・ETCO2の閾値は、米国獣医麻酔鎮痛専門医協会(ACVAA)が2025年に公表した小動物モニタリングガイドラインの記載に基づいています。平均血圧60〜65 mmHg未満、SpO2 95%未満、ETCO2 60 mmHg超が、患者評価と介入を促す値として示されています。心拍数・呼吸数・体温の範囲は麻酔管理で一般的に用いられている目安です。
平均血圧(MAP)はどう計算しますか?▾
観血的動脈圧が取れない場合は、MAP =(収縮期血圧 + 2 × 拡張期血圧)÷ 3 で概算します。このページの計算欄に収縮期・拡張期血圧を入力すると自動で算出されます。
印刷して院内に掲示してもよいですか?▾
問題ありません。麻酔器やモニターの横に貼って使えるよう、印刷時はヘッダーやボタンが省かれるようにしています。
麻酔記録も、この早見表と同じくらい簡単に。
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